こんにちは、エスコネクト広報の藤井です。共働き世帯の家づくりに関わる中で、間取りの相談でほぼ必ず話題になるのが「家事動線」です。回遊動線、家事ラク動線、最短動線など、さまざまな言葉がありますが、実際に建築家がプランニングした住宅を複数見ていくと、少し違った傾向があるように感じます。建築家が設計した間取りを見てきた中で見えてきた共通点を整理し、共働き世帯が間取りで失敗しにくくなる考え方としてまとめてみます。

家事動線は「回遊」より「削減」という考え方が多い

一般的には、家事動線＝回遊できるほうが良い、というイメージを持たれる方が多いと思います。ただ、建築家が手がけた間取りを見ていると、必ずしも回遊を重視していないケースも少なくありません。その理由として感じるのは、家事をラクにするために「動線を増やす」よりも、「そもそもの動作を減らす」ことに重点を置いている点です。洗う、干す、しまうといった家事の流れを細かく分解し、その一つひとつが自然につながる配置を考えていく。その結果、回遊しなくてもストレスなく家事が終わる間取りになっている印象を受けます。

建築家があえて採用しないことが多い間取りの傾向

建築家住宅のプランを見ていて感じるのは、「流行っているから」「便利そうだから」という理由だけで間取りを取り入れていない点です。例えば、次のような間取りは慎重に扱われているケースが多いように感じます。

・回ること自体が目的になっている動線
・使用頻度が低いのに面積を取る裏動線
・家事工程が逆に増えてしまう分岐動線

こうした要素は、床面積や建築コスト、日々の掃除や管理の手間を増やす可能性があります。そのため建築家は、「この動線はどんな家事を減らすためのものか」「本当に毎日使うのか」といった点を丁寧に整理しながらプランニングしているように見えます。

建築家住宅に多く見られる家事動線の特徴

実際に建築家が設計した住宅を見ていくと、共働き世帯にとって参考になりそうな共通点がいくつかあります。例えば、家事の起点となる場所が比較的コンパクトにまとめられている点です。キッチン、洗面、ランドリースペース、収納が近い位置関係に配置されていることで、移動距離そのものが短くなります。また、廊下を「ただ通る場所」としてつくらず、収納や作業スペースを組み込むことで、移動しながら用事が完結するような設計も多く見られます。動線がシンプルで迷いにくく、扉や仕切りを減らすことで、日常の小さなストレスが溜まりにくい点も特徴のひとつです。

家事動線＝回遊ではないと感じる理由

建築家住宅を見ていると、家事動線の良し悪しは「回れるかどうか」で決まるものではないと感じます。大切なのは、家事の流れが自然で、考えなくても体が動く配置になっているかどうかです。回遊できなくても、往復が少なく、立ち止まる回数が減っていれば、体感としては十分にラクになります。共働き世帯の場合、家事をしている時間そのものを短くしたいというニーズが高いため、結果として「回らないけれど無駄がない」間取りが選ばれているのではないかと感じます。

「時間を奪わない家」という考え方について

建築家が設計した間取りを見ていると、「家事をラクにする」というよりも、「家に振り回されにくい暮らし」を目指しているように感じる場面があります。無駄な移動が少なく、片付けが自然に終わり、家事が生活の中心になりすぎない。その結果として、家族と過ごす時間や自分の時間が確保しやすくなる、という考え方です。これは特別な設備や広さがあるから実現できるものではなく、日々の動き方をどう整理するかという間取りの考え方によって左右される部分が大きいように思います。

まとめ

共働き世帯が間取りで失敗しないためには、動線を増やすことよりも、家事の工程そのものを減らすという視点が役立ちます。建築家がプランニングした間取りには、回遊ありきではなく、無駄を整理し、日常の動きがスムーズになるよう工夫された設計が多く見られます。たくさん動ける家よりも、動かなくていい家。その考え方を知っておくだけでも、間取りを見る目は少し変わるはずです。これから家づくりを考える方にとって、今回の内容がひとつの参考になれば幸いです。